胸騒ぎは広がって…
2010.03.02.Tue 21:38

チリリン…
澄んだベルの音が響いた。
はい。お呼びでしょうか?
「サディを。サディアスを呼んでくれないか」
心なしか、少し沈んだ表情の旦那様。
机に広げられている手紙は…
ひょっとしてレオ様から…?
かしこまりました。
すぐにお連れします。
「それから…レオナルドの部屋の整理を…
荷物は彼の母の元へ送ってやってくれ」
確かに、慌てて出立したレオ様は
身の回りの物をほとんど持っていきませんでしたしね。
きっと不便な思いをしていることでしょう。
はい。そちらもすぐに…
失礼いたします。
退室しようとした私の背後で
旦那様が溜息をつくのが聞こえました。
デボラ様の病状が、あまり良くないのでしょうか?
サディ様にお話というのは、ひょっとして…
その時の胸騒ぎが、的中したことを知ったのは
それからしばらくしてのことでした。
屋敷中の使用人達が呼ばれ、
マーカスさんから報告がされました。
レオ様が、ミシェル様との婚約を破棄されたこと――
それは、ひょっとして…
お屋敷に戻ることがないかもしれないということですか?
レオ様をお慕いする者はたくさんいて
次期当主としてお仕え出来るのを喜んでいた者達にとって
その報せはとてもショックだったようです。
パピヨンも、きっと今頃騒然としていることでしょう。
そして、旦那様はサディ様を次期当主に決められたこと――
ルドロウ・キャッスルに
また大きな転機が訪れようとしているのでしょうか…?